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アクティングアウト考(2) 種類と特徴


3.アクティングアウトの種類と特徴

 一言でアクティングアウトと言っても、その行われるタイミングによって役割が変わってくるものである。行われるタイミングを人間中心設計(HCD)プロセスに則って説明する。
人間中心設計プロセス
アクティングアウトの種類
利用状況の把握と明示
(ユーザ調査)
・人工物の振る舞い
・ユーザ再現
設計による解決案の作成
(プロトタイプの作成)
・シミュレーション
要求事項に対する設計の評価
(ユーザ評価)
・プレゼンテーション
 利用状況の把握と明示(ユーザ調査のフェーズ)の段階では、2種類の視点が求められる。「人工物の視点」と「ユーザの視点」である。

1)人工物の振る舞い
 まず人工物側の視点であるが、MIT メディアラボでジョン前田らが行った「Human-Powered Computing Experiment」のように、人間がコンピュータの様々なハードやソフトの動く様子を演じることにより、新しい仕組みのアイディアを得るというアクティングアウトがある。
 古くは私の知る限りでは、2000年に多摩美術大学の須永剛司先生によって有志に指導された記録がNTTコミュニケーションズ大和田龍夫さんのサイトに残されている。
NTTコミュニケーションズ大和田龍夫さんのサイトより引用
 現在は多摩美術大学情報デザイン学科で植村朋弘先生が取り組まれている授業がある。私は直接は見たことが無いのだが、寝ている学生の横で、デジタル時計に扮した学生が「どのような間隔や音程のベル音を出すことによって起床させるか。」を演じているらしい。
植村先生の授業「シナリオデザイン」
 また、同志社女子大学の上田信行先生や公立はこだて未来大学の寺沢秀雄先生らも実践されている。私はこのような「人工物の振る舞い」アクティングアウトは経験したことが無いのでこれ以上の言及は避けますが。なりきって演じることによる「気づき」に主眼が置かれ、オーディエンスからのフィードバックというものはあまり目的として考えられていないようである。

2)ユーザ再現
 このような開発の上流工程で行われるアクティングアウトは、オーディエンスからの指摘や発見を目的とするよりは、自ら演ずることによる「気づき」に主眼が置かれる。次に解説する、ユーザの視点である「ユーザ再現」も、演ずることによる「気づき」が目的である。

 開発の上流工程において仕様書しかない段階で、インターフェイスやユーザの振る舞いを試行してみる技術に「認知的ウォークスルー法」がある。「ウォークスルー」とは芝居の立ち稽古の事だと棚橋さんが言っていた。要するに、これから開発する機器やサービスを使用した際のユーザの振る舞いをブレーンストーミングで試してみることを指す。

 アクティングアウトの「ユーザ再現」も、同じように開発中の機器やサービスを使用した時のユーザの振る舞いを演じてみて、そこに予見される問題や改善点を探るのが目的となる。まさに立ち稽古である。

 写真は、留学生に学生食堂の使い方を教える言語に依存しないサービスを考えるための「ユーザ再現」アクティングアウトを行っているところである。

 このアクティングアウトの記述は、このようなダイアグラムになる。これもコト(サービス)のスケッチである。

 このユーザ再現のアクティングアウトは、本来はフィールドワークとして本当のユーザを観察する方が正確なデータが採れる訳であるが。まだこの世の中に存在しない機器やサービスの使用状況を試してみるのには、開発者自らが演じる他無いのである。逆説的に言えば、既存の機器やサービスであるなら、出来る限り本当のユーザの観察を行うべきであろう。

 この「ユーザ再現」のアクティングアウトは、教育メソッドとして取り組まれているというよりは、開発者が無意識のうちに行っているという方が正しいかもしれない。しかし、意識して取り組むことにより、認知的ウォークスルー法の記述法を取り入れるなど新しい手法開発の余地があるように思われる。


△アクティングアウト考(3) 種類と特徴△紡海。
posted by アサノ | 00:13 | 情報デザイン 用語集 | comments(1) | trackbacks(0) |
コメント
認知的ウオークスルー評価のフォーマット改良しました。改善点は、タスクが実行可能かの総合評価欄を追加。各視点について操作ステップ全体をみてのまとめ評価を追加。縦横ともにまとめコメント覧を追加しました。フォーマットは別途メールで送付します。ABCDの評価は社内の評価軸にあわせました。
2009/08/05 09:16 by rshima
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