ワークショップにおけるコツの研究(13)学びのコストの勘違い
2014.07.13 Sunday
先日「情報デザインフォーラム」で話したことを蒸し返す。w
テーマが「ワークショップのコツ」だったのだが。
テーマが「ワークショップのコツ」だったのだが。
どうも最近気になってしょうがない事がある。
私は年間50〜70回ぐらいのワークショップをやっている。
1ヶ所で連続10回近くやる地域や企業もある。
2年間連続で20回ぐらい受ける人も稀ではない。
しかし、まったく理解が進まない人が多いのだ。
まったく時間とコストの無駄。ww
まずいことに、本人は至ってのんきで、毎回ワークショップを楽しんでいる。
困るんだよな〜。w
企業でトップダウンで学びに来ている人もいる。
それでも2年間やっても、何も身につかない人がいる。
これはモチベーションの問題の話では無いのだ。
学び方が間違っているのである。
ワークショップにはいろいろな目的がある。
今回話すのは、UXやHCDに関する考え方を学ぶワークショップについてである。
学びのための時間(コスト)については諸説があるが。
どうも、そのことが自分に向いているか判断するには20時間はやってみないと分からないというジョシュ・カウフマンの話は本当のような気がする。
以前、スキーのインストラクターに聞いた話では「1泊でスキーを初めてやりに来た人間は2度と来ないが、2泊で来た人間はまた来る。」というのがあった。
1泊だと6時間×2日間で転んでばかりで楽しいと思わないが、2泊だと6時間×3日間で最終日に少し滑れて成功体験が出来るので楽しくなる。と言うのだ。
それはとても分かる気がする。海外旅行に行っても、一つの街で1泊しかしない場合と2泊する場合で、まったく印象が違うことがある。
やはり、ある程度の時間が成功体験を作るからなのだろ。
また初心者を脱するには1000時間という俗説も分かる気がする。
スキーの1級もTOEICの800点も、死にもの狂いで2年間というのを聞いたことがある。そのことに専念できるのは、相当時間を捻出しても2年間で1000時間ぐらいがが限度である。
これは大学院の修士課程や、他の勉強にも当てはまる気がする。
以前、トップクラスの美術大学に入る為のデッサンのトレーニングの時間を計算したら、やはり1000時間だった。石の上にも3年みたいな感じか。
但し、これは専門家になるということでは無く、専門家のスタートラインに立つ資格を得るには、まず1000時間ということなのが分かる。
そして専門家になるのは10年か10000時間だ。
専門分野によっては最短で10年で行けるが、頭脳をフル回転させなくてはいけないような分野だと1日2時間ぐらいしか出来ないので10000時間。
世界的なピアニストでも、子どもの頃は1日2時間のレッスンで大学に入るまでに10000時間のトレーニングを終えるという。
ビートルズは売れるまでハンブルグのライブハウスで毎夜8時間し続けた。
しかし、これも超一流になる入り口に立つために最低10年から1万時間かかるという話だ。
イチローだって、超一流になってからの時間の方が長い。
ここで分かってきたのは、学びにはどんなものでも絶対的な時間が必要だということなのだ。
いわゆる千本ノックだ。楽をして甲子園に出た高校球児はいない。w
となると月に1〜2度開かれるワークショップでは専門的なスキルは身につかないということになる。
では何の為にワークショップはあるなだろうか?
ディビット・コルブの経験学習理論で言えば、大量な具体的な体験をすることがスタートである。これはワークショップでは賄えない。
ワークショップの役割は「省察」にあるのだ。
自分が大量に行ってきた(1000〜10000時間の)体験を、振り返って理解を深めるために行うのが正しい。
そこで得た知見を、自分の仕事にフィードバックして活かしてこそ学びの成果になるのである。
◇ワークショップのコツ、アーカイブ
第01回:三種の神器
2)WS実施
第05回:シャーペン禁止
第08回:壁に向かってブレストしよう
第09回:模造紙の貼り方
第11回:コンセプトが混迷したら
第12回:キャズムを越えろ!
第13回:学びのコストの勘違い
第14回:プラグマティック・ペルソナ