最近私のブログでは珍しく「
高等学校Webサイトリニューアル支援 2回目ミーティング」というエントリーでコメントが盛り上がっております。
このまま行くと炎上しそう(爆)なので、場を移してこちらで話します。
要旨はサイトは「クライアント」のためのものなのか「ユーザ」のためのものなのかということです。
先日の日本人間工学会アゴーデザイン部会の「
第1回ビジョン提案型デザイン手法シンポジウム」でも言及されていましたが(上記写真)、HCDプロセスにのめりこむとユーザしか見えなくなりますが、当然クライアント側のビジネス情報というものも考慮しないと創造的な開発はできません。
たとえばWebサイトであれば、ユーザは既存のものしか想像することは出来ませんが、クライアントは新しい技術や製品を市場に出そうと考えているかもしれません。
以前「
横須賀市役所のWebサイトリニューアル」でユーザのエスノグラフィックインタビューを行った時ですが。若いお母さんに保育園の情報を知るというタスクをやってもらいました。
横須賀市のサイトを使ってみて「ああ、十分情報が得られて、問題ありません。」というお答えでした。皆さんはそれをユーザの声とすれば、そのサイトの情報は良いと思いますか。
それではと、
他の自治体の保育園サイトを見てもらうと「ああ、これこれこの方がいいですね。」とお答えになり、横須賀市の欠点を挙げ始めます。
要は「ユーザは、自分が抱えている問題について構造化して話すことはできない」ので、根気よく聞きだしてあげることが必要になります。「ユーザが言っているから。」というのは、対象者のリクルートやインタビュアーの力量によって大きく変わるということです。
また先日の
情報デザインフォーラムで元アップルコンピュータの増井さんが「ユーザの声なんか聞いていたらi Phoneなんか出来ないですよ。」と言っていたのも印象的でした。
何が言いたいのかというと、Webサイトに限らず製品やサービスの開発というのは、主はクライアント側の出したいものがありきで、それが受け入れられるかのインタラクションをユーザに参加してもらってより良くするのが理想かと思います。これをユーザ参加型のデザインと言います。
HCD原理主義みたいになるのはなんだかな〜と思って、最近は学生にも「あまりユーザユーザ言うな。(笑)」と言ってます。
また、クライアント側でも自分が何を伝えたいのか分かっていない場合があります。ユーザが特定されておらず、何を誰に売りたいのかも分からないことが。こういう案件は、ユーザにインタビューするようにクライアントからもじっくりと話を聞く必要があります。
この案件は、技術屋さん達が今までに無い凄いソフトを作ったのですが、誰に何のために使ってもらうか考えずに出したために全然売れなかったのを改善したプロジェクトです。その会社の若手社員の方達と、一緒にそのソフトの特性を考えなら進めました。この場合は、ユーザにはあまり聞いても意味が無かったですね。
開発者や営業の人達を中心にインタビューしました。
そうそう、クライアントが重要ならクライアントのペルソナも作ればというご意見もありました。ペルソナを作る以前に
キャストというステークホルダーを数多く作ります。それにクライアント戦略の網をかけて
ペルソナを選び出します。
ぐちゃぐちゃして来たのでまとめます。
◇創造的な開発のイニシアチブはクライアント側にある。ユーザは過去しか知らない。
◇Webサイトを作ると言うことは、クライアントの戦略とユーザとのゴールの融合点を見つけること。
◇クライアントもユーザも自分が伝えたい事や不満を言語化出来ない。
◇クライアントもユーザもじっくり話を聞いてあげないといけない。
HCDプロセスの導入は、きっちり決まった手法では無く、案件ごとに流動的なものであります。クライアントの意識や会社風土、ユーザの意識やリテラシー能力など案件ごとに様々ですよね。
HCDプロセスは「こうでなくてはいけない。」という事は無く、もっとクライアントそれぞれのコンテキストに合わせた
導入方法があるのかな。
私の考え方って「ゆるい」のでしょうか?まあブログのエントリーで書ける事なんてこんなものなので、質問や意見のある方は、是非会ってお話し致しましょう。じゃないと行間が読めないよね。
関連情報:DESIGN IT! w/LOVE
なんでもかんでもユーザーに聞けばよいってわけじゃない。